2021年ー11月第3週

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11/19(金)の夕方〜宵にほとんど皆既月食に近い「部分月食」が見られます。

今回は東北北部以南の地域では,月食の始まり(16:18)はまだ水平線の下にあって見られず,既に欠けた状態で月が昇ってきます。特に月食前半は高度が約20°以下と低いので,東方向が開けた場所で観察する必要があります。

月が最も欠けるのは18:02で,約98%が欠けます。この時,皆既月食の時のように少しだけ赤銅色に見える可能性があります。ただし,月の残り約2%の明るさに比べるとかなり暗いので,撮影時には露出に注意が必要です。月食が終わるのは19:47で,月食時間は3時間半にも及び,部分月食としては20〜22世紀で最長です.高度が低いので,月食と地上の構造物を一緒に入れて,地元ならではの月食写真を撮影しましょう。

およそ4億年前の魚の化石とほとんど変わらない姿の魚・シーラカンスは,「生きた化石」と呼ばれています。水深100メートル以上の深い海に生息している彼らの生態はほとんどわかっていません。

今回,日本の調査チームがシーラカンスの「ふだんの姿」を固定カメラで撮影することに成功しました。映像では,サメが近づくとシーラカンスが大きな背びれを立てる様子が確認され,これまで常に立てていると思われていた背びれをふだんはたたんでいること,また夜行性だと考えられてきたシーラカンスが日中も活動していることなどが分かりました。

11/10の23時15分ごろ,各地の空で明るく輝く「光る物体」が目撃されました。夜空を横切っていく物体は光の色を変えながら大きく輝き,強い閃光を幾度か放って消えていきます。その間,なんと14秒。

関西各地や四国,遠くは関東からも目撃情報が寄せられたこの物体は「火球」。国立天文台の縣秀彦准教授は,この火球が年に数回程度しか見られないくらい大きい火球なのではないかと説明します。「少なくても,直径で10cm以上はあると予想されます。大きなものほど明るく見えるわけです」

11月中旬はおうし座流星群,しし座流星群がピークを迎える時期です。夜空を見上げれば,火球を見ることができるかもしれません。

日本時間の9日午後0時半すぎ,宇宙飛行士の星出彰彦さんが国際宇宙ステーションから地球へ約半年ぶりに帰還しました。星出さんは3回目の宇宙飛行で,今回は国際宇宙ステーションの船長として4月から宇宙に滞在。日本の実験棟「きぼう」で科学実験など8つのミッションを遂行し,4回目となる船外活動を行いました。

滞在中の様子は,星出さんのTwitterなどからも発信されています。重力のある地上だとひっくり返る「逆さゴマ」を無重力の宇宙ステーションで回すとどうなるでしょう? ぜひ結果を予想しながら見てください。

星出彰彦さんTwitter:https://twitter.com/Aki_Hoshide

身近な工作から建築などの大きなものまで,身のまわりのさまざまなところに使われている「接着剤」。この接着剤がどのようにはがれていくのか,これまでははがれた跡の観察や成分の分析によって間接的に推測されてきました。しかし今回,接着剤がはがれていく過程をナノメートル単位でリアルタイムに観察することに成功したと,産業技術総合研究所などが発表しました。

2つのアルミ片を接着剤でくっつけてから両端を引っ張り,はがれる様子を観察したところ,これまで考えられてきた「アルミから接着剤がはがれる」という仮説と「接着剤が裂けてはがれる」という仮説の,ちょうど中間のような複雑な現象が観察されました。

2021年ー11月第2週

11/8(月)の日没後の南西の空に三日月と金星のコラボが見られます。

この日の14時頃には,金星が月に隠される「金星食」が起こります。ただし,太陽光のために日本では肉眼で「金星食」を見ることはできません。夕方になると,「金星食」が終わって,月の後ろから出てきたばかりで-4.6等級と非常に明るい金星が月齢3の細い三日月のすぐ右下に見えます。日没時間(17時過ぎ)で高度が約20°以下しかありませんので,南西方向が開けた場所で観察する必要があります。三日月は,太陽の光が地球に反射して月を照らす「地球照」のため,暗くなるにつれて三日月以外の部分もうっすらと見えてくるはずです。高度が低いので,地上の構造物を一緒に入れて,地元ならではのオリジナルな,地球照を伴った三日月と金星のコラボ写真を撮影しましょう。

11/19(金)の夕方〜宵にほとんど皆既月食に近い「部分月食」が見られます。

今回は東北北部以南の地域では,月食の始まり(16:18)はまだ水平線の下にあって見られず,既に欠けた状態で月が昇ってきます。特に月食前半は高度が約20°以下と低いので,東方向が開けた場所で観察する必要があります。

月が最も欠けるのは18:02で,約98%が欠けます。この時,皆既月食の時のように少しだけ赤銅色に見える可能性があります。ただし,月の残り約2%の明るさに比べるとかなり暗いので,撮影時には露出に注意が必要です。月食が終わるのは19:47で,月食時間は3時間半にも及び,部分月食としては20〜22世紀で最長です.高度が低いので,月食と地上の構造物を一緒に入れて,地元ならではの月食写真を撮影しましょう。

地球の表面ではプレートが絶えず動いているので,地球の「極」は地理的に移動します。しかし,地球の深い場所にあるコアの外核が対流することによって生まれる地球の地磁気の軸に対し,地球の地殻が移動することがあるのかは分かっていませんでした。

今回,「古地磁気学」の研究により,今から8,600万年前から8,000万年前の間に地球の軸が今よりも横に傾き,約8,400万年前には今より約12度傾いてから,逆方向に回転して元に戻るというダイナミックな極の移動があったことを示す証拠が発見されました。

アメリカの研究により,太陽光の98.1%を反射する「世界一白い塗料」が開発され,ギネス世界記録に認定されました。この塗料は単に白く美しいだけではなく,太陽光に含まれる熱の大部分を反射することで,建物が熱を持つことを防ぐことができます。この塗料を屋根などに塗ることで冷房にかかるエネルギーを低減し,省エネルギーと気候変動への対応を両立させることが期待されています

東京・三鷹市にある国立天文台では,コロナ禍で公開が中止されていたプラネタリウムの定例公開が10月16日より再開されました。しばらくの間は,毎週火曜日正午にその週の公開日の予約が行われます。

このプラネタリウムでは,宇宙のさまざまな構造や天文学の最新のデータやモデルを,4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」が美しく迫力ある映像で描き出すのを見ることができます。研究者が最新の研究成果を自ら語る「アストロノマー・トーク」が行われる場合もあり,今後のスケジュールも要チェックです。

茨城県の南東部に広がる霞ヶ浦の湖面に浮かぶ謎のナタデココのような塊…その正体は,「オオマリコケムシ」の群体でした。

オオマリコケムシは「外肛動物門」の生物で,北アメリカ原産の外来種。1.5ミリほどの個体が寒天のような物質を分泌して集まり,群体を作ります。記事に出てくるのは25センチほどですが,時には直径60センチほどにもなるのだとか。

そんなオオマリコケムシ,どんな味がするのでしょう? とりあえず茹でただけで食べてみた画像についているキャプションは「霞ヶ浦ゼリー」。果たしておいしく食べることはできたのでしょうか。実感のこもった動画付きの記事です。

2021年ー11月第1週

2016年~2021年に全国2000人以上のボランティアによって行われた調査から,日本の鳥類の生息や繁殖などの現状が明らかになりました。この調査は1970年代に第1回,1990年代に第2回が行われ,約20年ぶりの今回が第3回となります。

過去2回の調査と比較すると,ガビチョウなどの外来種が増加し,ツバメやスズメ,ムクドリなど,開けた場所を利用する種が減少している傾向が見られました。調査結果をまとめた報告書・調査データはすべてweb上で公開され,ダウンロードも可能です。

人間が移動する手段として,「車輪」は非常によく使われています。しかし,生物の中で移動手段として車輪を採用しているものはなぜかほとんど存在しません。その理由としてよく言われるのが「車輪はデコボコ道が苦手だから」ですが,デコボコのない空中を飛ぶ動物に,プロペラで飛ぶものはいるでしょうか?

実際に車輪などの回転構造をもつ生物としては,べん毛をスクリューのように回転させる大腸菌や,魚の表皮にあるケラトサイト(細胞内にラグビーボールのような構造があり,それが回転することで動く)などが挙げられます。このような回転構造の致命的な弱点は,血管をつないで酸素や養分を送ることができないこと。だからこそ,回転構造をもつ生物は,微小なものに限られているのでしょう。

10月7日に埼玉県と東京都で最大震度5強を観測した地震の際,東京・江戸川区の旧中川を映す国土交通省のカメラが,“異様な光景”を捉えていました。撮影された動画では,静かに流れる真っ暗な水面から突然数多くの魚が跳び上がり,その約9秒後に激しく大地が揺れ,鳥が飛び回る様子が確認できます。

まるで地震を予知したかのような魚の行動ですが,専門家によるとこれは魚が地震のP波の小さな揺れを感じ取ったためとのこと。縦波のP波は水中で伝わりやすく,横波のS波は固体である地面に伝わることがよくわかる動画です。

地震波のうち,P波は進行方向に密度の変化が伝わる縦波で,Sは進行方向に垂直に揺れる横波です。地震波は普通,震源から上に向かって伝わるので,地表ではP波は縦揺れ,S波は横揺れとして感じられます。高校の物理では「液体や気体では媒質を横に少しずらしたとき,復元力がはたらかないため,横波は固体中しか伝わらない」と学習します。しかし,液体の金属中のナノメートル単位の世界では横波音波が検出されています。

2021年ー10月第4週

西アフリカからインドにかけて生息するサバクトビバッタは,時に空を覆い尽くすほどの大群となってあらゆる植物を食べ尽くしながら移動する「蝗害」を引き起こす昆虫です。甚大な農業被害や飢餓を引き起こすものの,成虫が非常に長距離を飛ぶことなどから,その生態はよく分かっていません。

今回,大集団を作る群生相のサバクトビバッタの集団では,オスとメスがほぼ別々の集団で成長して,メスが成熟するとオスの集団に合流して交尾し,ペアになったまま夜間一斉に産卵を行うということが明らかになりました。この発見は,効率的なバッタ防除に活かされることが期待されています。

論文の著者は「バッタ博士」の名で知られる前野ウルド浩太郎博士。「ウルド」はモーリタニアのサバクトビバッタ研究所の所長・ババ氏より授かったミドルネームで,この名前で論文を書いています。

映画『スター・トレック』シリーズで,ジェームズ・T・カーク船長を長年演じてきたウィリアム・シャトナー氏が,本当に宇宙旅行に飛び立ちました。

2021年10月13日(現地時間),現在90歳であるシャトナー氏を乗せた宇宙船ニュー・シェパードは,地球から約100キロ離れた宇宙の入り口まで到達し,宇宙空間を約11分間フライト。宇宙空間に到達した人類の最高齢を更新しました。

宇宙空間でほかの乗客が無重力状態を楽しむ中,シャトナー氏は窓の縁を握りしめて地球を見つめ,帰還後には地球の美しさと宇宙空間の黒に感じた死を語りました。

宇宙船ニュー・シェパードはアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙企業「ブルー・オリジン」により運営されており,本格的な宇宙旅行事業の実現に向けて開発を進めています。

キツネやイヌの糞を媒介に,ヒトにも感染が起こる寄生虫「エキノコックス」。これまで北海道やその周辺で確認されていましたが,近年,北海道から遠く離れた愛知県知多半島で連続してエキノコックスに感染した野犬が確認されたことから,知多半島で「定着(新しい生息地で継続的に生存可能な子孫をつくっている)」状態にあると報じられました。

エキノコックスの本来の宿主はネズミと,キツネやイヌなどイヌの仲間の動物ですが,まれにヒトに感染することがあり,10年ほどの無症状期間を経て肝機能障害を引き起こします。適切に予防すればヒトへの感染の危険はないとのことですが,今後もし分布が拡大した場合,野外での活動やペットの飼育などに大きな影響を与える可能性があります。

2021年ー10月第3週

10月4日から10月11日にかけて,今年のノーベル賞受賞者が発表されました。今回の科学ニュースでは,その中の医学・生理学賞,物理学賞,化学賞について解説します。選ばれた業績は以下の通りです。

医学・生理学賞:「温度・触覚の受容体の発見」

物理学賞:「地球気候を物理的にモデル化し,変動を定量化して地球温暖化の高信頼予測を可能にした業績」

化学賞:「不斉有機触媒の開発」

ノーベル賞公式HP(英語):https://www.nobelprize.org/

触覚や温度,痛みといった感覚がどのように受容されているのかは,長らく謎でした。そこでDavid Julius氏は痛みや熱,触覚に反応する神経細胞で発現している遺伝子を調べ,カプサイシン=痛みの刺激が結合すると活性化する遺伝子を発見しました。また,痛みを感じる受容体が温度のセンサーでもあることを発見し,痛みと熱さを感じる仕組みが同じであることを示しました。

Ardem Patapoutian氏は,触られる感覚や食べすぎたときの膨満感など,体に与えられる機械的な刺激を生物がどうやって検知しているかを発見しました。

ある種の細胞をピペットなどでつつくと活動電位が生じることは以前から知られていました。氏は細胞がつつかれたときに発現する遺伝子の中から,皮膚の触覚の遺伝子と,その遺伝子からつくられるたんぱく質をつきとめました。氏の発見は,炎症性や神経性の痛みを抑える鎮痛剤の開発や,消化器官の疾患治療法などの開発にも活かされています。

今回の物理学賞は,地球温暖化に関わる重要な業績に贈られました。環境科学の分野が選ばれるのは初となります。

現代において,地球全体の気候をシミュレーションする「気候モデル」の計算プログラムは,気候変動の問題を議論するうえで欠かせないものです。真鍋淑郎氏は1964年に気候モデルの基礎を確立し,その後数十年をかけてモデルの発展に尽力してきました。また,Klaus Hasselmann氏は,観測された地球温暖化が人間の経済活動のせいで起こったのかどうかを評価する統計的手法を開発しました。両氏の研究は,世界的な地球温暖化の議論をするための重要なベースとなっています。

気象などの自然現象にはランダム性があります。Giorgio Parisi氏は,一見ランダムに見えるさまざまな現象に潜んでいる規則性を定量的に明らかにする概念を発見し,統計力学をはじめ情報工学や生物学など幅広い分野に影響を与えました。

特定の化学反応に作用して反応を加速させるが,その物質自体は変化しないものを「触媒」といいます。2000年以前には,金属触媒(例:酸素を発生させる実験での二酸化マンガン)や,生体触媒(例:消化酵素)が主流でした。今回受賞したBenjamin List氏とDavid W. C. MacMillan氏は,第三の触媒である「有機触媒」,中でも「不斉有機触媒」を提唱し,その実用性を示しました。

有機触媒は高価で環境負荷が大きくなりがちな金属元素を使いません。また,酵素ほど複雑ではないので生産しやすく,さらに非対称有機触媒は同じ化合物で左右対称な鏡像異性体(エンナンチオマー)をつくり分けることができたため,医薬品などの生産に多大なる貢献をしています。

2021年ー10月第2週

太古の地球上で小さな分子が集まって複雑な大きな分子ができ,やがてそれらが増殖する分子集合体になって生命が誕生したという仮説があります。これまで,大きな分子や分子集合体ができる様子がさまざまな研究において観察されていましたが,「増殖する」という生物の能力がどのように獲得されたかはわかっておらず,100年あまりの間,化学進化における「化学と生物学のミッシングリンク」となっていました。

今回,ペプチドを含むコアセルベートの液滴が小分子をエサとして取り込みながら成長し,外部からの刺激で分裂して増殖する様子が初めて観察されました。生命誕生の謎に迫るだけでなく,ペプチド複合体材料の生産技術にも活用されることが期待されています。

大雪の日にはたびたび車両のスタックが発生し,時に大規模な立ち往生が発生します。この「スタック」のメカニズムを解明したと,福井大と新潟大の研究チームが発表しました。

実車での試験や立ち往生の現地調査から,圧雪の上で停車したり,タイヤが空転したりしてくぼみができると,車がスタックしやすくなる悪循環が起きていることが分かりました。

特に圧雪が7センチを超えるとスタックしやすくなるとのことで,目安としては1時間当たり5~10センチ程度の降雪が半日から1日続いた場合,路面の圧雪が7センチを超え,スタックの危険性が高まるそうです。また,今後は立ち往生の危険度の数値化や,危険度予測なども開発予定とのことです。

日本では少なくとも過去1万年ほどの間,オーロラ帯に入ったことはありませんが,鎌倉時代には地磁気の軸が日本側に若干傾いていたため,オーロラが見えやすかったといわれています。実際に藤原定家が「明月記」でたびたび記していた「赤気(せっき)」は,オーロラであることが明らかになっています。

今回,「オーロラ帯」と呼ばれるオーロラが見えやすい範囲について,地磁気の変化などをもとに過去3000年にわたって計算され,日本に最もオーロラ帯が近かったのは鎌倉時代であることが分かりました。1204年に京都から定家が見た赤いオーロラが,科学によって裏付けられたのです。

2021年10月3日,新潟県阿賀野市の瓢湖に3羽の白鳥が飛来。今冬の初飛来となりました。

瓢湖は白鳥の飛来地として全国的に有名で,毎年10月上旬に第一陣が訪れ,3月下旬まで滞在しています。白鳥の飛来数のピークは11月下旬で,時には最大5000羽を超える白鳥が見られることもあります。

瓢湖の白鳥は昼間は周辺の田んぼなどに食事に出かけてしまうので,観察するなら朝早くか,地元の方がえさやりを行う午前9時、午前11時、午後3時がおすすめ。特に早朝,朝焼けに染まる山並みをバックに飛び立つ白鳥の姿は圧巻です。

2021年ー10月第1週

現在,日本人は世界でももっとも長寿の国のひとつです。しかし,大正10年頃の平均寿命は42歳。しかも明治末期から大正10年頃まで,平均寿命が徐々に短くなっていました。

なぜ日本人の寿命が大正10年頃を境に一転して長寿になっていったのか。そのカギは,なんと水道水にありました。上水道が作られ始めた頃,水道水は消毒されていなかったのです。大正10年に,当時の新技術だった液体塩素による水道水の消毒が始められると,乳幼児死亡率が劇的に改善し,平均寿命を変えるほどの影響をもたらしました。

「水道水の消毒」という身近なことに潜んでいた謎。本文では,軍事用の発明だったはずの液体塩素が公衆衛生のために使われるようになった奇跡的な巡りあわせも紐解いています。ぜひじっくり読んでいただきたい記事です。

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は,今年創立50周年を迎えます。それを記念して,JAMSTECの保有する研究船・探査機などのイラストをデザインした記念切手が,2021年10月1日から郵便局のネットショップと全国の郵便局の窓口で販売されます。

切手には深海探査の代名詞ともいえる有人潜水調査船「しんかい6500」をはじめ,地球深部探査船「ちきゅう」,自律型無人探査機「じんべい」「ゆめいるか」など,7種類の調査船・探査機が登場。1シート840円です。

世界的な権威がある米国の医学賞「ラスカー賞」(臨床分野)に,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するm-RNAワクチン技術の開発に関わったカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏が選ばれました。

m-RNAをワクチンや薬に利用するという発想は1990年前後からあり,長い研究の歴史があります。しかし,合成したm-RNAを人体に入れると免疫機構が「異物」と認識する上,m-RNA自体が体内で壊れやすいという問題があり,実用化には至っていませんでした。

カリコ氏とワイスマン氏は,m-RNAを構成する物質の一部をt-RNAの構成物質に入れ替えることで,これらの問題が解決できることを発見。2005年の発表当時はまったく注目されませんでしたが,研究は継続され,今回の短期間でのワクチン開発につながりました。

九十九里浜の3地点142か所で地層を調べたところ,これまでに知られていた江戸時代の津波の痕跡よりも古い時代の津波の跡が見つかりました。津波で運ばれた堆積層の中に含まれていた化石の年代測定の結果,この津波が起きたのは平安~鎌倉時代の800~1300年頃と推定され,これまで知られていなかった未知の巨大地震の存在が明らかになりました。当時の地形などをもとに行われたシミュレーションから,震源が房総半島沖のプレート境界である可能性が示唆されています

理科の実験でもおなじみの顕微鏡。さまざまな顕微鏡を通して見た美しい世界を集めたニコンの顕微鏡写真コンテストが今年も開催されました。

最優秀賞は「ライブオーク(ブナ科コナラ属の常緑高木)の気孔とトリコーム(表皮細胞の毛状突起)」。小さな葉の裏に,深海の生物のようにも見える不思議な世界が隠れていることを,美しい写真で切り取っています。

身近なタマネギの皮もサクランボの茎に生えたカビも,顕微鏡をのぞくことでガラリと姿を変えます。芸術の秋,ミクロの世界の美しさを鑑賞してみてはいかがでしょう。

2021年ー9月第4週

単細胞生物から多細胞生物への進化においては,多くの細胞を一つにまとめることが重要な第一歩といえますが,その過程は謎に包まれています。

米ジョージア大学の実験グループは,単細胞生物の酵母を試験管の中で育て,その謎に挑みました。10年をかけた研究の結果,酵母の細胞どうしが複雑に絡み合い,およそ45万個の細胞を含む巨大な集合体を形成させることに成功しました。巨大化の重要なキーとなったのは酸素濃度でした。無酸素条件下でのみ巨大な集合体ができたことから,現在では生物に欠かせない酸素が,かつては進化の妨げになっていた可能性も示唆されました。

これまで日本人は縄文系と,稲作とともに大陸から渡来してきた弥生系の二つの人類集団にルーツがあると考えられてきました。

今回,金沢大学などの研究チームは,金沢で発掘された古墳時代の古人骨をはじめ,日本やアジアの各地で出土した古い人骨のDNAを分析しました。その結果,弥生人は北東アジアの人の特徴をもち,古墳時代の人は東アジアの人の特徴をもっていること,古墳時代の人は現代の日本人とほぼ同じ遺伝子の構成をもつことが分かりました。このことから,日本人は二つではなく,三つの人類集団にルーツをもつという可能性が示唆されました。

古代の人類がいつから,どのような服を着ていたのかについて,考古学的な証拠はほとんど見つかっていませんでした。

しかし,モロッコの洞窟に残された大量の骨の調査から,石器時代の人類が動物の皮を剥いでいた可能性が示唆されました。一部の骨は人為的に形を加工されてへら状になっており,皮を剥ぐのに適した形をしていました。また,肉用に処理されたウシなどの骨に残された傷とは異なるパターンの傷が,肉食獣の骨に見つかりました。このような骨の痕跡は,石器時代の人類が食用とは別に,肉食獣の毛皮を剥いでいたことを示すと研究チームは考えています。

「3Dプリント金太郎飴技術」という新しい技術により,3Dプリンターで霜降りの牛肉を作成することに成功したと,大阪大学などの共同研究グループが発表しました。

カギとなったのは,培養肉で作る肉の組織構造。通常の培養肉では主に筋肉の細胞からミンチ状の肉を作りますが,今回の研究では筋肉や脂肪,血管の細胞をもとに,それぞれファイバー状の培養肉を作成し,それらを束ねて結合させることで,「サシ」の入った「霜降り培養肉」を再現しました。

2021年ー9月第3週

バナジウム(原子番号23,元素記号V)は,建材や工具などに使用される鉄鋼を製造する際,強度を増すために添加されるなど,さまざまな形で私たちの生活に必要な元素です。このバナジウムを,国際宇宙ステーション(ISS)の無重力条件下で,微生物の力を使って抽出することに成功したと,このたびNASAが発表しました。

生物を使って自然界に存在する金属元素を効率よく抽出する技術は「バイオマイニング」と呼ばれており,特に微生物を利用したものが宇宙空間で成功したことで,いつか人類が地球以外の星に進出したとき,現地で必要な金属資源を入手する技術として期待されています。

9月14日朝,関東から東北の広い範囲で地震が観測されました。この地震の震源は東海道南方沖。しかし,震源に近い八丈島や三重県,静岡県などでは揺れは観測されず,300キロ以上離れた関東や東北が揺れる「異常震域」と呼ばれる現象が起きました。

この地震は,太平洋側の東から日本列島の下に沈み込んでいる太平洋プレートの非常に深いところで発生しました。地震波が伝わりやすい堅いプレートに沿って地上に揺れが伝わったため,震源から離れた場所がいちばん大きく揺れる「異常震域」となったと考えられています。

ドイツのドレスデン美術館が所蔵しているフェルメールの初期の傑作「窓辺で手紙を読む女」が修復され,背景の壁の部分に隠されていたキューピッドの画中画がよみがえりました。

1979年のエックス線調査などにより,絵の下にキューピッドが隠されていることはすでにわかっていました。今回,キューピッドを隠している部分の絵の具の層を少量採取し,顕微鏡などを用いて詳しく分析したところ,フェルメールが絵を仕上げ,数十年ほど展示された後に,別人が壁の部分を上塗りしたことが判明。本来の状態に戻すための修復が施されました。キューピッドがよみがえったこの絵は,ドレスデン美術館で展示され,その後2022年1月22日から東京都美術館で展示予定です。

アメリカの漫画のキャラクター「ガーフィールド」のようなしま模様のネコは,「トラネコ」とも呼ばれ,身近な存在です。トラネコの特徴的なしま模様をつくり出す遺伝子は,受精後間もない胚の皮膚細胞で活性化され,「Dickkopf WNT Signaling Pathway Inhibitor 4」(DKK4)という遺伝子を発現させた細胞が皮膚細胞の厚みの差を生じさせ,厚くなった部分の皮膚には濃い色の毛が誘導されることがわかりました。

胚の皮膚に生じる厚みの差がつくり出すしま模様のパターンは,第二次世界大戦中にエニグマの暗号を解読したアラン・チューリングの理論で説明ができることもわかり,動物たちの多様な体の模様がどうやってできたのかという謎の解明にもつながる可能性があります。

2021年ー9月第2週

「人々を笑わせ,そして考えさせてくれる研究」に与えられる「イグ・ノーベル賞」が今年も発表されました。1991年に創設されたこの賞は,ユーモア満載の授賞式と,まじめに研究を突き詰めた結果ユーモアにたどり着いた数々の業績が話題を呼んでいます。

今年選ばれたのは「猫の鳴き声からネコ語を解析,ヒトと猫との会話を模索したこと」「潜水艦でのゴキブリ退治の新しい方法の研究」「なぜ歩行者はいつも他の歩行者とぶつからないのかを明らかにした実験」「なぜ歩行者は時には他の歩行者とぶつかってしまうのかを明らかにした実験」などの10の研究です。タイトルを並べただけですでに笑ってしまう,ユーモアあふれる研究の数々。気になった研究はありますか?

太陽系には,現在8個の惑星が知られています。しかし,海王星の外側にある小さな天体の軌道から,海王星のさらに外側に巨大な未知の惑星があるという仮説が提唱されています。もしも実在すれば第9番目の惑星となることから,仮に「プラネット・ナイン」と呼ばれているこの未知の天体について,その位置と質量などを詳しく予測した計算が論文にまとめられました。

もしもプラネット・ナインが実在するとすれば,地球から見て天の川の中にまぎれている可能性が高いとみられ,すばる望遠鏡など多くの観測施設を用いて,実際にプラネット・ナインを見つけ出そうとする試みも始まっています。

8/13に11年ぶりに噴火した「福徳岡ノ場」は,小笠原諸島の南硫黄島の北東約5キロにある海底火山です。この海底火山の噴火の際に飛散した噴出物が,海洋気象観測船により採取され,気象庁により公開されました。噴出物は直径約40センチ,重さ約5キロの軽石で,非常にもろいそうです。

8月の噴火では,海中からの噴煙が最大1万6000メートルまで上がり,噴出物が周辺に堆積して大小2つの島ができました。1986年に同様の噴火が起きた際にも島ができたものの,数か月で消滅しており,今回できた島も最終的には波によって削られるなどで消滅する可能性が高いとみられています。

博物館で恐竜の展示をつくる学芸員,鳥のタマゴの発生から恐竜の進化を考える研究者,さまざまな研究を反映して恐竜の復元画を描くイラストレーターが,どうやって「恐竜の時代」まで遡り,古生物の世界を伝えているのかを,中高生向けに解説する特別授業が開講します。

「映える」展示と「正確な」展示は違う? タマゴから恐竜ってどうつながるの? 誰も見たことのない古生物はどうやって描くの? 3人のプロフェッショナルの視点から,太古の世界の扉を開く2時間授業は,9/19の17:00~19:00に開講。YouTubeでの受講は,中高生に限らずすべての方が受講できます。古生物に興味のある生徒には,質問ができるzoom受講をおすすめしてみてはいかがでしょう。

2021年ー9月第1週

愛媛県大洲市にある長浜高校は,校内に水族館を有する全国でも珍しい高校です。その水族館を企画・運営する水族館部の部員が飼育生物を観察する中で,「カクレクマノミはなぜ,刺胞動物であるイソギンチャクに刺されないのか?」という素朴な疑問が生まれました。部員たちの10年近い研究の末,2017年,ついに「カクレクマノミがまとうマグネシウムイオンの効果により,クマノミはイソギンチャクに刺されない」という大発見がなされます。

さらにその発見から“駆除ではなく危険を緩和して海洋生物との共存を目指す”という,生き物にも環境にもやさしいクラゲ予防クリーム開発がスタート。2021年4月,クラゲ予防UVクリームとして発売されました。

科学技術団体連合事務局が開催している『サイエンスフォトコンテスト』。第4回の今年は「発見!身近な科学の不思議や驚き」をテーマとして,写真作品を募集中です。最優秀賞の商品はなんとGoPro(アクションカメラ)。三脚・カメラケース等もセットです。身近なサイエンスをとらえた渾身の1枚,あなたのストレージに眠っていませんか?

応募は事務局HPの専用フォームより,受付は10/31(日)までです。

2013年,ブラジルから国外に密輸されそうになっていた大量の化石が,警察の強制捜査により押収されました。その中から,巨大なとさかをもつ奇妙な姿の翼竜のほぼ全身の骨格が発見され,これまで頭骨しか発見されていなかった翼竜 Tupandactylus navigans の化石であることが確認されました。

頭の4分の3が帆のようなとさかでありながら,長い首と長い脚,比較的短い翼をもつこの翼竜は,おそらくとさかを求愛行動に使い,普段は歩行して移動していたのだろうと推測されています。また,同じ科とされているより大きなとさかをもつ翼竜 Tupandactylus imperator と,同種の雌雄なのではないかとも考えられています。

北米原産のアライグマは,雑食性で繁殖力も高い外来種で,生態系や農業などに与える影響が非常に大きいことから「特定外来生物」に指定されています。

このアライグマについて,市民の力を借りて生息状況を探る調査が新潟県で行われています。ねぐらに使うことが多い木造の神社・仏閣を対象に,アライグマの爪痕の写真を定規などと一緒に撮って「アライグマ痕跡マップ」に投稿。専門家が写真からアライグマの痕跡かどうか判定し,マップに反映することで,県内の生息状況を可視化するという試みです。公開されているマップから,自宅近くにアライグマがいるかどうか見ることも可能です(新潟県内のみ)。調査は9/30まで。

◆アライグマ痕跡マップ http://wironkemono.com/racoon2021/racoon_map/view.php

2021年ー8月第2週

【2021.8.12〜13「ペルセウス座流星群」】

8/12(木)深夜〜13(金)明け方を中心に,スイフト・タットル彗星を起源とし,三大流星群の一つである「ペルセウス座流星群」が見られます。今回は,12日の21時過ぎに月は沈んでしまうので,月明かりの影響がなく,かつ放射点が高いので,観察には絶好の条件です。

流星は,放射点(天頂からやや北東)の方向だけでなく,放射点から離れる方向に向かって空全体に現れるので,レジャーシートなどを敷いて地面に寝そべって,なるべく空の広い範囲を観察しましょう。流れる速度が速いため,途中で急激に増光することもあります。夜半を過ぎてから流星の数が増加していき,東日本では薄明が始まる3時30分頃,西日本では4時頃に,街明かりのない開けた場所では,50個/1h程度見られる可能性があります。

理科でもおなじみのメダカの仲間は,東南アジアを中心に37種が広い範囲に分布しています。しかし,その共通祖先がいつ,どこで誕生したかはこれまで分かっていませんでした。

今回,世界中のメダカの仲間のDNAを調べて解析したところ,メダカの仲間は中生代後期,恐竜の時代にインド亜大陸にいた種から起源したという結果が得られました。

メダカはダツ目の魚です。サヨリ科,ダツ科などの海水魚から分かれたメダカの先祖は,インド亜大陸がユーラシア大陸と衝突した後に,陸続きになったアジアに広がっていったと考えられます。小さなメダカの壮大な旅が,DNAから明らかになりました。

太陽から遠く離れた木星は,表面温度が-150℃ほどと,冷たい氷の星というイメージがあります。しかし,木星の高層大気の温度は約420℃にも及ぶことが観測によってわかっており,なぜこんな高温になるのか,長い間謎とされてきました。

そこで,木星の大気の温度分布を高性能な望遠鏡を用いて精密に解析し,マッピングしたところ,木星の北極・南極のオーロラ領域が熱を発し,その熱が木星全体に広がっていることが分かりました。木星の上層大気は,太陽風によって発生するオーロラが熱源となり,異常なまでの高温になっていたのです。

頼れるのは視覚・触覚・嗅覚・味覚と,pH試験紙のみ! 正体不明の白い粉5種類は何か?

見た目,サラサラ具合,pHなどから,塩化物を同定していくクイズ動画です。「塩化アンモニウムの味」など,マニアックな化学物質の知識が問われます。

番組降板を賭けたこの勝負,くられ先生(「アリエナクナイ科学ノ教科書」などの作者)がツナっちに勝つことができるのかも注目です。

「子ども科学電話相談」でも大人気の鳥類学者,川上和人先生の新刊をご紹介します。

絶海の孤島での鳥類調査は,あいかわらず波乱万丈な事件の連続です。小笠原諸島の火山島・北硫黄島では怪奇現象に襲われ,南硫黄島ではサメがいる海を泳いで上陸,日本最東端の無人島・南鳥島では18時間のタイムアタックで調査を敢行!

また,今回の新刊では,新しい島が今まさに生まれている「西之島」についても語られています。章タイトルは「火山・颱風・鮫・熱射 西之島軽挙妄動編」「火山・颱風・鮫・熱射 西之島前言撤回編」。先生の身にいったい何が起こったのか!?は,ぜひ読んで確かめてください。

『鳥類学は、あなたのお役に立てますか?』 川上和人著 新潮社 2021年3月 ISBN 978-4-10-350912-7 定価1,595円(税込)

2021年ー8月第1週

鹿児島県の奄美大島と徳之島,それに沖縄県の沖縄本島北部と西表島にある森林などが,7/26,新たに世界自然遺産に登録されました。アマミノクロウサギ,ヤンバルクイナ,イリオモテヤマネコなど,国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに記載される絶滅危惧種が95種も生息し,独自の生態系が残る,生物多様性の保全において極めて重要な地域であることが評価されました。

候補地となってから18年。生態系を守るために多くの人がたゆみなく努力してきたことがついに実りました。世界の宝と認められた自然を,未来へ引き継いでいくための大きな一歩といえるでしょう。

マラリアは現在もなお世界で毎年40万人以上の犠牲者が出ている病気であり,犠牲者の多くは幼い子供たちです。マラリアを予防するワクチンは長い間切望されてきましたが,これまで有効なワクチンは存在しませんでした。

7/26,COVID-19のワクチン開発にも関わったドイツのビオンテック社が,mRNA技術を用いたマラリアワクチンの開発を始めることを発表しました。2022年末までに臨床試験(治験)を開始し,マラリア流行の中心地であるアフリカでの生産を検討しています。

生命科学の第一線で活躍中の研究者からの中高生に向けたメッセージを紹介するWEB記事です。

深津 武馬先生の専門は,昆虫と共生している微生物。昆虫の体内には,宿主の昆虫の生存に不可欠な栄養素をつくりだしたり,宿主の体色を変えたり,宿主の性別を変えたりするような微生物など,多様な微生物が共生しています。このような生命の不思議や生物の多様性について,動画なども用いて解説しています。

このシリーズでは,ほかにも多くの研究が紹介されています。科学への興味の扉として,キャリア教育の一環としても,おすすめしたい記事です。

「銀河団」とは,数百から数千の銀河が集まったもので,重力的に集まっているものとしてはこの宇宙で最大の物体です。その巨大な物体が衝突する様子が詳細に観測されました。

今回観測されたのは,地球から約9億6000万光年離れたところにある銀河団「Abell 1775」です。ここでは小さな銀河団と大きな銀河団が衝突を繰り返し,ひとつの巨大な銀河団となりつつある場面が観測されています。

発表された観測画像では,銀河団に含まれている高温のガスが衝突の摩擦ではぎとられた後に渦を巻く様子や,銀河団の中にあるブラックホールから激しく吹き出すジェットなど,衝突にともなう激しい現象を見ることができます。

2021年ー7月第4週

ペットのネコ(イエネコ)の死因のトップは腎臓病です。このネコの腎臓病の治療薬となりうるタンパク質が東京大学の宮崎徹教授により発見されました。

血液中に存在するその物質(AIM)は,体内に死んだ細胞があるとくっつきます。くっついたAIMが「旗」のような役割を果たし,AIMめがけてマクロファージなどのほかの細胞がやってきて,死んだ細胞を食べて取り除きます。

しかしネコはこのAIMが正常に働かないため,腎臓内部の死細胞が取り除かれず,腎不全が起きるのです。正常なAIMを薬として投与すれば,ネコにとって致死的な腎臓病を防ぐことが可能となるかもしれません。

多くのネコ好きの期待を集めた発見でしたが,コロナ禍の資金難により治験薬の製造直前でストップがかかっていました。しかし,資金難が報道されると,研究への寄付が殺到。研究の再開が期待されています。

タンパク質は数多くのアミノ酸がつながって折りたたまれた,複雑な立体構造を取っている物質です。しかし,タンパク質の立体構造を特定するには長い時間と多額のコストがかかり,これまでの研究における課題となっていました。

このタンパク質の立体構造を遺伝子配列情報から解析するAI「AlphaFold v2.0」が無償公開され、注目を集めています。ファイル容量が2.2TBと,PCの容量や計算スペックが必要ですが,ブラウザ環境で動かせる簡易版も有志によって公開されています。今後,タンパク質に関する研究がより加速することが期待されます。

2021年7月6日~16日まで,小笠原諸島の西之島における生物等の調査が行われました。2013年以降活発な火山活動を続けている西之島では,海に隔絶された生物のいない裸地にどのように生態系が形成されていくのか,陸地がどのように形成されていくのか,等,定期的な調査が行われています。

今回の調査は火山活動の影響もあり,船上からの遠隔調査でしたが,火山から噴出した堆積物の上にアジサシ等の鳥類の繁殖が確認されました。また,島の周囲の海中からは80種を超える生物が確認されました。

島の北側の海中から見つかったコケムシのなかまは,日本では記録のない種であり,新種の可能性もあるということです。

民間のロケットによる宇宙旅行も始まった2021年。いつかあなたが宇宙へ行く日が来ても困らない,宇宙とロケットの入門書が発売されました。

「宇宙は暑い? 寒い?」「物を投げて加速する装置はすべて『ロケット』である」「宇宙で前に進めるのはロケットだけ」「宇宙ではたらく人がしていること」など,宇宙に関わる興味深いトピックが,図解でわかりやすく解説されています。将来の宇宙旅行のお供に一冊,いかがでしょうか。

『人類がもっと遠い宇宙へ行くためのロケット入門』 小泉 宏之 著 インプレス社 2021年7月 ISBN 978-4-295-01171-2 定価1,980円(税込)

2021年ー7月第3週

化石として遺る生物の活動についても,生物と同じように2名法が適応されます。今回の話題は足跡。

2020年7月,中国四川省で恐竜の足跡化石が発見されました。この化石の調査を行った中国地質大学(北京)のシン准教授は,子どもの頃からの『ドラえもん』ファン。映画でのび太が恐竜に自分の名前をつけるシーンを見て,のび太の夢を叶えるため,自分が発見した恐竜にのび太の名前をつけることにしたのだそうです。

付けられた名前(学名)は「エウブロンテス・ノビタイ Eubrontes nobitai 」(「i(イ)」は人名を示す接尾辞)。発見されたのはまだ足跡のみで,どんな姿をしていたのか夢が膨らみます。

なお,エウブロンテス・ノビタイの足跡化石のレプリカは,川崎市の藤子・F・不二雄ミュージアムや,上野の国立科学博物館にて展示が予定されています。

巨大な星の最期に起こる超新星爆発という現象には,まだまだ謎が多く残っています。

今から40年ほど前,超新星爆発のひとつの形として,星の中心部で電子が失われる現象が起きて星の爆発が引き起こされる「電子捕獲型」という理論が提唱されましたが,それを裏付ける観測は長い間なされませんでした。

しかし,2018年に観測された超新星爆発についてエネルギーや放出された元素の種類を詳しく分析したところ,この理論を裏付ける観測結果であったことが,このたび発表されました。

「わたしは,無駄なものをつくるプロです」と名乗る“無駄なもの発明家”による,渾身のゆるゆるものづくり入門が,子供向けの書籍になりました。

「※この本を読んでも,役に立つものはまったく作れません。ご注意ください」と出版元の紹介に真っ先に出てくるように,「インスタ映え台無しマシーン」「小銭探知靴」など,絶妙に役に立たないのに妙に興味のツボをくすぐる発明が,丁寧な解説とともに紹介されています。

すべての漢字にルビがつき,小学生でも読める表記になっていますが,発明品の仕組みには回路や抵抗,伝導など,中学校の学びも関連しています。失敗上等,ものづくりへの興味の入り口に生徒にもおすすめしたい一冊です。

『無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング~』技術評論社 2021年7月 ISBN 978-4-297-12213-3 定価1,980円(本体1,800円+税10%)

新潟県糸魚川市の親不知から北アルプスの朝日岳をつなぐ栂海(つがみ)新道は,1966年から6年の時間をかけて,「ここに道をつくりたい」と願った地元の有志「さわがに山岳会」により切り開かれた登山道です。

登山道が完成して50年目の節目の今年,糸魚川市のフォッサマグナミュージアムでは,「さわがに山岳会」とその中心となった小野健氏の業績をたたえ,栂海新道を中心とした糸魚川の山についての特別展が開催されます。

HPでは海から高山までをつなぐ雄大な登山風景を楽しめる「VR登山体験」も充実。日本最初のジオパークに認定された糸魚川の豊かな自然を,自宅にいながら体験もできます。

フォッサマグナミュージアム開設50周年特別展「アルプスと海をつなぐ栂海新道 ~大縦走路の軌跡~」 2021/7/22~9/26 月曜休 大人¥500,高校生以下無料

2021年ー7月第2週

7/12(月)の日没後の西の空に三日月(月齢2.4)と金星(-3.9等級)・火星(1.8等級)を1カットで撮影できるチャンスがあります。

月と金星の位置関係は6/12とほぼ同じですが,今回はそれに火星が加わります。火星はやや暗めで,金星のすぐ左に見えるやや赤みのある星がそうです。

今回も日没時間(19時前後)で高度が約20°しかありませんので,西方向が開けた場所で観察する必要があります。太陽の光が地球に反射して月を照らす「地球照」のため,暗くなるにつれて月は三日月以外の部分もうっすらと見えてくるはずです。高度が低いのを逆手に取って,地上の構造物を一緒に入れて,地元ならではのオリジナルな,地球照を伴った三日月と金星・火星のコラボ写真を撮影しましょう。

まもなく夏休み。しかしコロナ禍の今夏は,まだ自由にあちこち出かけるのも難しいかもしれません。そこで,おうちでサイエンスを楽しめる動画などをいくつかご紹介します。

ひとつめはNHK for Schoolでもお馴染み「大科学実験」。

スチールウールを燃やすと酸素と結びついて重くなる,という実験は中学校理科の定番です。「実験73」では,190kgのスチールウールを燃やしたらどうなるのかに挑みます。なぜそんなに大量に,という野暮は言いっこなし。そもそも燃えるのか? どのくらい時間がかかるのか? どうやって重さを量るの?

どの回も壮大な「やってみた」が詰まっているこのシリーズは,一部が無料で配信中です。

科学系YouTuberとして人気な市岡元気先生。米村でんじろう先生のラボに所属していた経歴もあり,さまざまなジャンルの分かりやすい科学動画を公開中です。

「光るかき氷の作り方」「世界一大きいシャボン玉!」など,自由研究でやってみたくなる動画や,大人気コミックスの内容を再現した「ブドウからエタノールを作り出す!Dr.Stone ドクターストーン【実験】」「炭治郎の『爆血日輪刀』をアルミホイルを溶かして造る!!【鬼滅の刃実験】」など,愉快な動画がそろっています。

博物館の収蔵庫。それは一般に公開されない,博物館の裏側です。大阪の長居公園にある大阪市立自然史博物館の収蔵庫は,博物館の地下にあります。

その地下に眠っている大量の標本の中にダイブして,地下から引っ張り出した標本に光を当てる動画シリーズ「アングラ収蔵庫トーク」。ディープな内容に加えて,普段はなかなか入ることのできない収蔵庫からの配信なので,整然と……ばかりでもない,博物館の裏側を体感できる映像となっています。現在#7まで公開中です。

夏休みのサイエンスショーの花形はやはり「爆発」。書籍「Mad Science ――炎と煙と轟音の科学実験54」は,あらゆるヤバめの実験が美しい写真とともに紹介されています。

ポップコーンに塩味を付けるために液体ナトリウムに塩素ガスを吹きかけ,ボルトに持ち手を付けるためにテルミットに火を放つ,などなど,超危険なDIYがぎっしりと詰め込まれています。

ほとんどの実験で「How To」が解説されていますが,「用意するもの:水銀15キロ」など,少々ハードルは高めです。また,挑戦する際は安全に十分配慮しましょう。

2021年ー7月第1週

2020年代の前半に計画されていた日本の火星の衛星への探査計画。このたび,火星の二つの衛星「フォボス」と「ダイモス」のうち,「フォボス」へ向け,2024年に探査機を打ち上げるという日程で中間報告が取りまとめられました。

火星探査計画では,「はやぶさ」「はやぶさ2」同様,フォボスの表面から「砂」を採取するサンプルリターンを計画しています。火星や火星の衛星がどのように形成されたかという謎を解き明かすことに加え,地球から火星へ往復する技術を開発することが期待されています。

1919年に岡山県の津雲貝塚から約3000年前の縄文時代の人骨が多数発見されました。その中のひとつに,右足や左手などが欠損し,骨に無数の傷跡がある人骨がありました。

この人骨の傷の謎が今回,解明されました。骨には全身で少なくとも790の傷跡が残っており,治癒の経過が認められていません。また,骨に残された傷にはサメの咬み跡に共通する特徴が認められること,攻撃を受けた部位や咬まれ方がサメの咬傷被害のパターンとよく一致することから,この人物はサメに襲われて死亡したのだと特定されました。

今回の発見は,人類史に残る最古のサメ襲撃事件となります。

ハリガネムシはカマキリなどの昆虫に寄生する生物で,自らの繁殖場所である川や池に移動するために,陸上生物である宿主の行動を変化させ,川や池に入水させることで知られています。

これまで,ハリガネムシに寄生された昆虫は,水面に反射する光に誘引されていると言われていました。しかし,自然界には水面以外にも光を反射する物が多く存在する中で,なぜ水面に宿主を誘導できるのかは分かっていませんでした。

今回の研究で,ハリガネムシに感染したカマキリは,水面に反射した光に多く含まれる「水平偏光」に強く誘引されることが分かりました。ハリガネムシは,宿主の水平偏光に対する感受性を操作し,水に飛び込ませているのです。

「睡眠」という行動がなぜ必要なのかは,実はまだ解明されていません。しかし,睡眠が不足すれば授業中でも不足を補おうと眠ってしまう生徒がいるくらい,睡眠は私たちヒトにとって必要不可欠なものです。

多くの生物にとっても,睡眠は必要不可欠です。しかしその睡眠のしかたは,ヒトとはだいぶ異なる場合があります。例えば脳の半分ずつ眠るイルカ,寝不足の解消が不要なオットセイ,土に潜って夏眠をとるハイギョなど,「睡眠」もまた,多様な営みなのです。

2021年ー6月第4週

『ポケットモンスター』に登場するカセキから復元されたポケモン(カセキポケモン)と,本物の化石を比較できる異色の展示が,北海道の三笠市立博物館で7/4から始まります。

会場では,カセキポケモンの骨格想像図や骨格をイメージした実物大模型などと,本物の古生物の化石があわせて展示されます。両者を『比較・観察』するという科学の基本的な手法を体験しながら,ポケモンを通して古生物の新たな面白さを発見できる,学術とエンターテインメントのコラボ展示。秋以降,全国の博物館を巡回予定です。

※三笠市立博物館の特別展『ポケモン化石博物館』の入場は完全予約制です。

腎臓結石をもつ患者の間で,「ジェットコースターに乗った後,結石の症状が和らぐ」という噂がありました。そこで,ミシガン州立大学の研究者は,腎臓や尿路を正確に再現したシリコンの模型を使い,この噂を科学的に検証しました。

実際に患者から取り出した結石を,尿を模した液体を満たした模型に浮かべ,ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンにのべ60回乗車。特に後部の車両に乗ったとき,腎臓の上の方にある小さな結石が排出されやすくなるということを確かめました。この研究は,2018年にイグノーベル医学賞を受賞しました。

2012年前半,宇宙のはるか彼方にある巨大な星からの光が突然観測できなくなりました。恒星の光の強さが変わることはよくある現象ですが,この星の場合,すべての波長の光が200日にわたりほぼ観測されなくなりました。星の光が何かに遮られているのは確実ですが,今のところ,起きた現象のすべてを説明できる仮説は出てきていません。「VVV-WIT-08」と名付けられたこの星の謎について,10年間交わされてきた議論が論文にまとめられ,発表されました。

マルハナバチはフカフカの毛に覆われた比較的大型のハチのなかまで,「飛ぶぬいぐるみ」とも呼ばれます。さまざまな植物の花粉を運ぶ重要な花粉媒介者(ポリネーター)ですが,近年世界的に減少傾向にあるといわれています。日本のマルハナバチの実態を広く調べるため,インターネットを活用した市民参加型調査『マルハナバチ国勢調査』が行われています。

参加方法は,スマホやデジカメでマルハナバチの写真を撮り,どこで撮影したかを添えてメールで送るだけ。質問などをあわせて送れば,返信をもらうこともできます。

あなたの撮った写真が,日本のマルハナバチを救うかもしれません。身近な花に来るハチを,観察してみませんか。

2021年ー6月第3週

ハキリアリの群れの最期をご存じでしょうか。大群で生きるハキリアリの群れに,卵を産むことができる「女王」はたった1匹しかいません。女王アリが死ぬと,新しい卵が産まれなくなった群れは徐々に崩壊に向かいます。特にハキリアリは高度に分業して組織的に菌類を栽培する生活を行っているため,滅びの過程で群れの行動にさまざまな変化が起こります。

2021年5月下旬,多摩動物公園で飼育されているハキリアリの群れのひとつで,女王アリが死亡しました。動物園では,女王を失ったこの群れも展示を続け,群れの終わりまでの日々を来園者とともに見届けることにしています。

※多摩動物公園の入園は完全予約制です。昆虫園での虫よけの使用はご遠慮ください。

世界最大級の花として有名なショクダイオオコンニャクのつぼみが,東京の神代植物公園でまもなく開花を迎えます。前回の開花は2019年で,2年ぶりの開花となります。花は開花すると数日しかもたず,肉が腐ったような強烈な悪臭を放つことでも知られています。

6/17時点で,つぼみの高さはすでに180㎝。花は来週,6/20以降ではないかと予測されています。

※神代植物公園の入館は完全予約制です。HPよりご確認ください。

1914年,三浦半島三崎沖の深海210mから発見された「ヨウサイイソギンチャク」。発見された地点の周辺を幾度も調査したにもかかわらず,このイソギンチャクは最初に発見された2個体のみで,ほかに一度も見つかったことがありませんでした。

しかし今回,三崎沖の深海から,約100年ぶりにヨウサイイソギンチャクが再発見されました。これまで再発見が難しかったのは,このイソギンチャクの種同定の困難さも関わっているとのこと。

勝浦市にある千葉県立中央博物館分館 海の博物館では,6/18~7/30の間,関連の展示が予定されています。

下北ジオパークでは,昨年の研究成果を発表する学術研究発表会を7/3(土)の午後にオンラインで開催予定です。弘前大学の鎌田耕太郎氏による「芦崎に分布する泥炭層の地質年代からみた砂嘴の古地理」など,3名の研究者から最新のジオ研究についての解説を聞くことができます。

参加費は無料。申し込みはメールにて,締め切りは6/25(金)。Microsoft Teamsを使用したオンラインでの発表会なので,現地に足を運べない方も参加可能です。

2021年ー6月第2週

6/12(土)の日没後の西の空で,三日月と金星を同時にカメラにおさめられます。

月は夜空では圧倒的に明るく,金星と比べて,満月では1000倍以上,半月でも100倍以上もの明るさがあります。そのため,月に露出を合わせると金星は暗くなりすぎてしまい,金星に露出を合わせると月が明るくなりすぎてしまいます。しかしながら,三日月では金星との明るさの違いが少ないため,両者を同じ露出で撮ることができます。

今回は,日没時間(19時前後)で高度が約15°しかありませんので,西方向が開けた場所で観察する必要があります。三日月は,太陽の光が地球に反射して月を照らす「地球照」のため,暗くなるにつれて三日月以外の部分もうっすらと見えてくるはずです。高度が低いので,地上の構造物を一緒に入れて,地元ならではのオリジナルな,地球照を伴った三日月と金星のコラボ写真を撮影しましょう。

進化論の父・ダーウィンは,「帰化に成功する外来種は,その土地に適応した在来の植物と近縁であると予測したいが,実際にはそうではないことが多い」ということを述べました。これは「ダーウィンの難題」と呼ばれています。

この難題について,日本国内の生物多様性ビッグデータを用いて外来植物と在来植物の分布を地図化し,外来植物の侵入を決定している要因を検証する研究が行われました。その結果,日本国内の外来植物の侵入・定着には,外来種の原産地,人為かく乱,在来植物群集の空きニッチが関係していることが明らかになりました。

新潟市の水族館「マリンピア日本海」は,市政100周年を記念して1990年にオープンしました。30周年を祝って,ご当地アイドル・NegiccoとコラボしたCMを作成,HPでも公開中です。

マリンピア日本海では,専門家による生物についての解説が聞ける「マリンピアカレッジ」や,新潟の自然を再現したエリアをスタッフが解説してくれる「にいがたフィールドガイド」などの催しも定期的に開催されています。

休館日:年末年始,3月の第1木曜日とその翌日 入館料:大人¥1,500 小中学生¥600 幼児¥200

素粒子の一種「ニュートリノ」は,物質を構成する素粒子の中でも極端に小さく軽く,見ることも触れることもできません。あらゆる物質を――私たちの体さえも素通りしてしまうので,「幽霊粒子」とも呼ばれます。この謎めいた粒子の謎を解明するため,これまで活躍してきた「スーパーカミオカンデ」の次世代となる観測施設「ハイパーカミオカンデ」が岐阜県飛騨市神岡町で着工されました。

素粒子の極小の世界を観測する「顕微鏡」であるハイパーカミオカンデは,一方で宇宙の謎に向けられた「望遠鏡」でもあります。宇宙の始まりや天体の仕組みなど,多くの謎を解き明かすことが期待されています。

2021年ー6月第1週

素数ゼミとしても知られる「周期ゼミ」が今年2021年,アメリカで大発生することが予想されています。今年羽化する集団は「ブルードX(テン)」と呼ばれ,17年の周期をもちます。同じ周期で発生するものの,実はこの集団には3種のセミが含まれています。

この記事では3種のセミの鳴き声を実際に聞き比べられます。1匹だけの音声を聞いていると趣ある声ですが,これが合計数兆匹も発生するアメリカの今年の夏はずいぶん賑やかなようです。

17年ぶりの周期ゼミがアメリカで発生している2021年,日本では120年ぶりの現象が観測され始めています。それは,身近な植物であるタケの一斉開花です。

前回の竹の開花は,ハチクならば明治時代の1908年頃で,2020年代が次の開花時期と予測されていました。そして昨年から少しずつ,タケの花が咲いたという報告が全国であがり始めています。

開花のピークは2020年代の半ば頃ではないかと予想されており,今後数年は開花に立ち会えるチャンスです。タケの花は,春の終わりから初夏,まさに今頃の気候でよく見られるそうです。

これまで,磁性をもつ永久磁石は遷移金属や希土類の合金でのみ知られており,半導体は強磁性を示さないことが知られていました。磁石の性質と半導体の性質をあわせもつ「強磁性半導体セラミックス」は,ごく限られた条件でのみ報告されており,規模も非常に小さいものでした。

しかし今回発見された,パラジウム酸鉛に鉄とリチウムを少量共置換することで得られた物質は,グラム単位の量で強い磁性を示し,室温で永久磁石に吸い付きます。

この発見のきっかけは名古屋大学が展開していたプログラム「名大MIRAIGSC」の一環で2人の高校生が行った研究でした。

京野菜の一種であるミブナは,同じ京野菜のミズナと分類学上は同一の種ですが,ミブナは丸いヘラ形の葉,ミズナは深い切れ込みのある葉という形態上の違いがあります。

ミブナとミズナに対しゲノムシークエンス解析を行ったところ,葉の形態に関わるBrTCP15という遺伝子に違いがあることが分かりました。また,古文書を調査したところ,1800年代中頃~後半でミブナの葉が切れ込みのある葉からヘラ形へと変化していること,そのころのミブナにはカブのような大きな胚軸があることが分かりました。そこでカブの遺伝子を調べたところ,ミブナのBrTCP15遺伝子とよく似た配列をもつ品種が見つかりました。ミブナの変化には,カブとの交雑が関連している可能性が示唆されます。

2021年ー5月第4週

埼玉県の小学6年生,柴田亮さんは,庭のシマトネリコに集まるカブトムシの行動を詳細に観察し,本来夜行性であるはずのカブトムシが,シマトネリコを利用する場合には昼も活動することを発見しました。シマトネリコは台湾などに生息する植物ですが,もともとシマトネリコを利用する台湾のカブトムシは夜行性であることが知られています。

日本のカブトムシでのみこのような行動の変化がなぜ起こったのかはまだ分かっていませんが,植物の利用と昆虫の活動リズムが関連することが示唆され,非常に興味深い発見です。この研究は山口大の小島渉講師と共同で進められ,論文として米国の生態学専門誌『Ecology』に掲載されました。

毎年5月22日は「国際生物多様性の日」です。日本国内でもさまざまな生物が絶滅の危機にありますが,2020年にその中の1種・オガサワラシジミの飼育下での繁殖が途絶したニュースを,今回改めてご紹介します。

小笠原諸島には多くの固有種が生息しています。オガサワラシジミもその内の1種です。かつては小笠原の複数の島で生息していましたが,近年では母島のみとなり,2018年を最後に野生での記録が途絶えています。絶滅を回避するため,2005年より多摩動物公園などで保護増殖事業が行われてきましたが,2020年,飼育下の個体もすべて死亡しました。

絶滅の危機にまで追い詰められてしまった生物を救うのは容易ではありません。そうなる前に何ができるのか。「国際生物多様性の日」をきっかけに,考えてみませんか。

梅雨や台風など,豪雨災害のシーズンを前に,避難情報に関するガイドラインが改訂されました。これまでの「避難準備の情報」は「高齢者等避難」に,また「避難勧告」「避難指示」は「避難指示」に一本化。すでに災害が発生しているような状況では,最高レベルの「緊急安全確保」となり,より早い避難行動を促すような内容となっています。

自然災害に関わる学習などで,学習内容とあわせて新しい避難情報・警戒レベルと,災害時に取るべき行動を確認するようにしましょう。

私たちが住む地球がある天の川銀河は,渦巻き状の構造をした「渦巻銀河」です。現代の宇宙において,渦巻銀河は銀河全体の7割ほどを占める,ごくありふれた形です。しかし古い時代にさかのぼるにつれ,渦巻銀河の割合は減少します。

今回発見された渦巻銀河BRI1335-0417は,124億年前に存在していた銀河であり,観測史上最古の渦巻銀河です。宇宙誕生から14億年という古い時代の渦巻銀河の発見により,銀河の渦巻き構造がいつ,どのようにできたのかという謎の解明につながることが期待されています。

2021年ー5月第3週

私たちが住む地球がある天の川銀河は,渦巻き状の構造をした「渦巻銀河」です。現代の宇宙において,渦巻銀河は銀河全体の7割ほどを占める,ごくありふれた形です。しかし古い時代にさかのぼるにつれ,渦巻銀河の割合は減少します。

今回発見された渦巻銀河BRI1335-0417は,124億年前に存在していた銀河であり,観測史上最古の渦巻銀河です。宇宙誕生から14億年という古い時代の渦巻銀河の発見により,銀河の渦巻き構造がいつ,どのようにできたのかという謎の解明につながることが期待されています。

海から30kmほど離れた山の中腹,しかも廃水を下水道に流すことができない! そんな制約の中で研究を重ね,岡山理科大学准教授の山本俊政さんは陸の上で海の魚を安定して育てる方法を生み出しました。

山本さんが開発した人工飼育水「好適環境水」は,海水魚に必要な最小限の成分だけを含んだ水であり,塩分濃度は海水の1/4。淡水魚や野菜もこの水で育てることができます。さらに水をリサイクルして循環できる仕組みを確立し,海から遠く離れた山の中や,水の調達が難しい砂漠でも魚を育てることが可能に。将来は宇宙での応用を見据えています。

初夏になるとtwitter上で行われている市民参加型の生物調査「ネジバナリレー」,2021年版がいよいよ本格的に動き始めました。5/16現在,鹿児島,山口,和歌山などからすでに開花の情報が上がっています。

コロナで遠出が難しい今,身近な自然に目を向けるきっかけとしていかがでしょうか。参加方法は以下の通りです。

1.ネジバナ花茎の写真を撮る。

2.撮影場所の情報を記録する。(例:○○県××市)

3.ハッシュタグ「#ネジバナリレー2021」「#ねじばなネットワーク」をつけてツイートする。

4.当アカ(@nejibana_net)より「いいね」されたら集計されたことになります。

(ネジバナリレー2021アカウント@nejibana_net より)

※生徒と一緒に参加される場合,SNS上で発信する際は安全に十分配慮し,ダイレクトメッセージ(DM)機能などの使用をご検討ください。

「あつ森」最終回

博物館のサカナゾーンに展示されているさまざまな魚や水棲生物について,サンシャイン水族館の飼育員が解説しています。

種ごとの特徴をとらえた生物の動き,川の上流・中流・下流(河口)の環境の再現性やそれぞれの水槽における魚のチョイスなど,「生物を見る目」からの解説が興味深いです。

そして【「あつ森」で学ぶ生物学 その①】同様,今回の結論も「フータはすごいがんばってる」。専門家がことごとく絶賛するフータ館長,けっこう激務なのではないかと心配になります。

2021年ー5月第2週

2018年以来3年ぶりに日本で皆既月食が見られます。

今回は日本では月の出と部分食の始まりがほぼ同時で,皆既の時も高度が低い(10°〜15°程度)ので,南東方向が開けた場所で観察する必要があります。一方,高度が低いので,皆既月食と地上の構造物を一緒に入れて,地元ならではのオリジナル月食写真を撮影できるチャンスです。

ただし,皆既の継続時間の平均はおよそ1時間ですが,今回は20時11分〜26分の15分間だけと非常に短いので,注意が必要です。また,当日はスーパームーンでもあります。皆既月食とスーパームーンが重なることは珍しく,皆既時の赤銅色の月「レッドスーパームーン」を是非とも観察・撮影しましょう。

なお11月19日には,皆既に近い部分月食が見られます。

水産庁の研究機関である「国立研究開発法人 水産研究・教育機構」のHP内のキッズページにて,海の生き物のペーパークラフトが公開されています。

マイワシやブリなど身近な魚から,マツカサウオ,ナンヨウマンタなどの変わった魚,マスコットキャラクターまで,全56種。作成難易度は★1つ~★5つまでの5段階に分けられています。ただし,ズワイガニだけは★8つ。つまようじでののり付けが必要な超高難度です。

紙にプリントすれば,のりとはさみだけで楽しめるこのペーパークラフト。ステイホームのお供にいかがでしょうか。

プレートとプレートの境界において,断層が地震波を放射せずにゆっくりと動きながらひずみエネルギーを解放するスロースリップ(ゆっくり滑り)という現象が近年検出できるようになりました。

この「ゆっくり滑り」について,大地震がゆっくり滑りの発生サイクルを乱し,ゆっくり滑りの活動が変化したことで次の地震を誘発。さらにこの二つの地震で周辺のゆっくり滑りが活性化し,三つめの地震が誘発されるという,大地震と「ゆっくり滑り」の相互作用が明らかになりました。

「あつまれ どうぶつの森」では,ゲーム内で花どうしをかけ合わせる「交配」により,新しい花を生み出すことができます。中でもつくるのが難しいのが「青いバラ」。

「青いバラ」は,現実の世界でもつくりだすのに20年以上かかりました。その「青いバラ」をきっかけに花の研究者を目指したかはくの水野貴行さんとともに,あつ森の「青いバラ」の交配方法を読み解きます。

ゲーム攻略法として巷に言われている交配方法を見て「メンデルの再発見と言うべきでしょうか」というコメントが飛び出すほど,遺伝の基本法則を活かして作られている「あつ森」。花の色や花の種類へも興味が広がります。

2021年ー5月第1週

大人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」では,登場する動植物の種類や動きなどが非常に丁寧に作られています。

ゲームの中の「博物館」における生物や古生物,展示のデザインなどにも,最新学説や実際の国立科学博物館(通称:かはく)の展示などが反映されています。

そんな「あつ森」の「博物館」を,かはくの学芸員が徹底解説。フータ館長の過労死を心配しつつ,ゲームでは解説のない「生物の置かれている位置」「一部の生物にかかっているガラスカバーの意味」「恐竜の姿勢」などを読み解きます。

3月末に新作が発売されたゲーム「モンスターハンター」。シリーズに登場した20種類のモンスターの生態や進化の過程,味や調理方法まで大真面目に考察した書籍『モンスターハンター 超生物学 モンスター VS 生物のスペシャリスト』が2019年に発売されています。

鳥類研究者の川上和人氏,東海大学海洋学部の武藤文人氏,動物園ライターの森由民氏,爬虫類・両生類研究家の中井穂瑞領氏と,各分野の専門家が執筆し,実在の生物をふまえた解説は,楽しみながら生物学の理解をも深められるようになっています。

「モンスターハンター 超生物学 モンスター VS 生物のスペシャリスト」

ISBN:9784295008156 インプレス社 2019/12/23発行 ¥1,430 電子版あり

ゲーム公式サイトで最初に表示されるのは「米は力だ」という力強い文字。「天穂のサクナヒメ」は,和風アクションRPGというジャンルながら,「日本伝統の米づくりをゲーム史上類を見ない深さで体験することができる(ゲーム公式HP)」という,異色のゲームです。

タイヌビエ,コナギ,クログワイといった難防除雑草や,イネツトムシ(イチモンジセセリ),ウンカ,イナゴなど,現代においても収量に直結する害をもたらす害虫が登場し,いもち病や倒伏なども発生する,ゲームとは思えないリアルな稲作が体験できます。

理科のみならず,社会科や,小学校での稲の栽培経験など,分野を横断した知識がつながるゲームとして,プレイしてみてはいかがでしょうか。

ゲーム公式サイト:https://www.marv.jp/special/game/sakuna/

子供の頃,「ポケットモンスター」の世界にあこがれ,ポケモンマスターを夢見ていたシャオ・ユン氏は,大学で生物学を学び,昆虫学者への道を歩み始めました。そして2020年,未分類だった甲虫類3種を新種として記載。発見が難しい希少な種であることから,伝説のポケモン「フリーザー」「ファイヤー」「サンダー」の英語名を学名として命名しました。

子供のころから「むしタイプ」のポケモンが大好きだったというユン氏。好きなポケモンは「カイロス」だそうです。

2021年ー4月第4週

原子核に中性子が1個多く含まれている重水素を含む「重水」は,水と同じH2Oの化学式で表されます。重水も通常の水も化学的には全く同じ組成なので,同じ性質をもつはずです。しかし,重水を実際になめた人々からは「重水は甘く感じる」と言われていました。

本当に重水は甘いのかについて,今回実験が行われました。その結果,不思議なことに,マウスは重水の甘味を感じていないのに,人間にとって重水は「甘い」と感じられることが分かりました。

2004年に淡路島(兵庫県洲本市)で発見された恐竜の化石が,原始的なハドロサウルス科の新属新種の恐竜であることが分かり,「Yamatosaurus izanagii ヤマトサウルス・イザナギイ(伊弉諾の倭竜という意)」と命名されました。

ハドロサウルスの仲間は,白亜紀後期の後半以降,非常に繁栄した恐竜です。

今回の研究により,北米東部やアジアで発祥したハドロサウルス科の恐竜のうち,北米にいたものは一度絶滅し,アジアから世界へ広がった可能性があること,また最初期(約9,500万年前)に大繁栄した原始的なハドロサウルス科の恐竜の一部が東アジアで生き残り,その後多様化したという進化の道筋が新たに示唆されました。

JAXAが発行している情報誌「宇宙(そら)のとびら」のバックナンバーがHPで無料公開されています。2007年夏の創刊号から最新号まで,全55号がPDFで読み放題!

宇宙に関わる仕事をしている方へのインタビュー,宇宙探査の解説,実験や工作など,毎号さまざまな記事が掲載されています。

最新の第55号でおすすめなのは,特集「宇宙トイレの歩み」。なくてはならない設備だけれど,テレビなどではなかなか見ることがない宇宙船の「トイレ」に迫ります。

大人気の人体の細胞擬人化コミック「はたらく細胞」の「新型コロナウイルス編」と,新規書き下ろしの「感染予防編」が,BGM・効果音つきのムービングコミックとして無料公開中!

コロナウイルスが体内に侵入した時,体の中で何が起こっているのか? ウイルスと戦う細胞たちの視点から,分かりやすく解説されています。

コミックスは全6巻。理科で扱う「血球のはたらき」や,予防接種の意義理解につながる「抗原抗体反応」などの題材をコミカルに描きます。アニメ化・舞台化もされた人気作品です。

2021年ー4月第3週

NASAは現地時間4月19日,火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」による火星での初飛行が成功したと発表しました。

火星の空気は非常に薄く,地表の気圧は地球の1/100程度。地球の高度3万メートルに相当します。このように薄い大気の中でヘリを飛ばすことは,1990年代からずっと検討されてきたものの,非常に困難な課題でした。

今回インジェニュイティはホバリングし,無事に着地することに成功。薄い空気という課題の解決方法は,普通のヘリの5~10倍の速度で翼を高速回転させることでした。

2019年,地球から5500万光年にある巨大銀河M87を撮影した映像が発表され,大きな反響を呼びました。そのデータをより詳細にまとめた研究結果がこのたび発表されました。

19の電波望遠鏡による膨大なデータを反映した画像により,ブラックホールの周囲で磁場や粒子や重力や放射線がどのように相互作用しているかが詳細に検討できるようになりました。

この画像から,一般相対性理論を検証したり,太陽系に飛び込んでくる高エネルギーの宇宙線の起源の謎が解き明かされたりといったことが期待されています。

これまで,別種の動物の「警戒する声」を聞いて行動を変化させる動物は多く知られていました。しかし,アメリカの大学の研究チームは,リスが鳥の鳴き声を盗み聞きして「安全確認」をしていることを発見しました。

この実験で,タカの声を聞いたリスが警戒しているところに,小鳥の「おしゃべり(chattering,捕食者がいないときに複数の個体が鳴き交わす声)」を聞かせると,環境音だけ聞かせた場合に比べ,リスがより早く警戒を緩める様子が観察されました。

もしかすると,これまで思われているよりも多くの動物が,安全を確認するためにほかの種の動物の声に耳を傾けているのかもしれません。

多くの人にとって身近な春の花,タンポポ。

花の下にある「総苞片」が反り返っているものは外来のセイヨウタンポポ,ということは比較的知られているが,現在の日本の都市部で見られるタンポポは,実はタンポポセイヨウタンポポと在来のタンポポの3倍体雑種や4倍体雑種が大半です。

文一総合出版のハンドブックシリーズ「タンポポハンドブック」の著者・保谷彰彦さんと,実際にタンポポを観察し,見分けながら歩いたレポートです。

2021年ー4月第3週

◆【房総半島沖の深海から大量のプラスチックごみ発見 ―行方不明プラスチックを探しに深海へ―】

プラスチックごみは生物に分解されず,生態系への悪影響が懸念されています。海洋には今も毎年1,000万トンを超えるプラスチックごみが流入し続けており,その多くが深海に沈んでいると考えられていましたが,実態はよく分かっていませんでした。

今回,有人潜水調査船「しんかい6500」を用いた調査で,房総半島沖の水深6000メートル付近の海底に,大量のプラスチックごみが堆積していることが確認されました。昭和59年(1984年)製造の食品包装がほぼ無傷で見つかるなど,深海ではプラスチックがより分解しにくい証拠も見つかっています。

目の水晶体には普通の細胞がもっている核やミトコンドリアなどの細胞小器官がなく,透明です。100年以上前から,水晶体の細胞が成長する過程で細胞小器官が分解されていることが知られていました。通常,細胞小器官はオートファジーにより分解されますが,今回,水晶体の細胞における細胞小器官の分解の様子をリアルタイムで捉え,細胞質基質(サイトゾル)に存在する脂質分解酵素が水晶体細胞の細胞小器官を分解することを突き止めました。

映画「キングコング」で有名になった雄ゴリラの胸叩き(ドラミング)。ゴリラにとってこの行動はどのような意味をもつのか,さまざまな推測がなされてきました。

この研究では,数年をかけて25頭のゴリラの胸叩き500回以上について,胸叩きの周波数,叩いた回数と持続時間を記録し,分析しました。その結果,ゴリラの胸叩きの音は体格のよさに応じて低くなり,その音を遠くまで届けることで,ゴリラ同士の無用な争いを避けている可能性が示唆されました。

展示リニューアルのため休館中だった青森県立三沢航空科学館が,2021年4月20日にリニューアルオープンします。

小惑星探査機「はやぶさ2」の原寸大模型や,「ホンダジェット」の技術実証機が導入されるほか,体験型展示施設も拡充。月や火星,冥王星の重力を体験できる「宇宙探査ミッション」や,空間飛行を味わえる「ローラージップ」などが新たに楽しめます。

青森県立三沢航空科学館 月曜休,入館料:一般¥510/高校生¥300/中学生以下無料

2021年ー4月第2週

広島市植物公園で栽培されている巨大コンニャクが3/29に開花しました。

この花は,世界で最も背の高い花を咲かせる「アモルフォファルス・ギガス Amorphophallus gigas」として4年間大事に育てられてきましたが,開花した花を確認したところ,別種の「アモルフォファルス・ディカス・シルバエ Amorphophallus decus-silvae」であることが判明しました。

咲いた花はギガスよりはやや小ぶりながら,高さは約2.9メートルと非常に背が高いものでした。「シルバエ」種のコンニャクの開花は日本初だということです。

江戸時代末期の医師・緒方洪庵の遺した薬箱の中身が,最新技術で特定されました。

洪庵が晩年期に使用していた薬箱には,ガラス瓶に入った製剤22本などが入っていましたが,何本かは開栓不可能で,これまで中身が謎とされてきました。

今回,ミュオンビームを用いた元素分析法によって,白色の粉末が入った瓶の1本を非破壊で分析したところ,水銀,塩素のシグナルが観測され,瓶の表記の薬史学的な考証結果とあわせ,当時「甘汞(かんこう)」と呼ばれていた塩化水銀(I)であることが判明しました。

山梨,静岡,神奈川各県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」が,最新の知見を反映した富士山噴火時のハザードマップを発表しました。

過去5600年間の噴火の記録と最大の溶岩噴出量,火砕流の最大規模や,より詳細な地形のデータ等を考慮して検討し直したところ,従来の想定よりも短時間で広い範囲に溶岩流が到達するおそれがあるなど,さまざまな影響が予想されることが分かりました。

今後,各県や市町村の防災計画等に活かされていく予定です。

静岡県(富士山火山防災対策) http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/fujisanbousai.html

山梨県(富士山火山防災対策協議会) https://www.pref.yamanashi.jp/kazan/fujisankazanbousai.html

神奈川県(防災・消防) http://www.pref.kanagawa.jp/menu/1/4/22/index.html

2021年ー4月第1週

ウミウシの仲間「嚢舌類」(のうぜつるい)のコノハミドリガイとクロミドリガイの2種において,非常に大規模な自切(じせつ)・再生現象が発見されました。複数の個体において,首元から自切し,心臓を含む全身の8割以上を切り離した頭部のみの姿になった後,ほとんど元通りに全身を再生することに成功したのです。

このような能力をもつ進化的意義はまだ分かっていませんが,体内の寄生虫を排除するためではないかと推測されています。

フォークボールはバックスピンの回転をしているため,回転により浮き上がる力(揚力)を受けて上向きに曲がる軌道になるはずです。しかし,実際には放物線のような「落ちる」軌道を描きます。

このことは長らく謎とされてきましたが,ボールの縫い目まで詳細に計算する数値流体シミュレーションを実施したところ,ボールの縫い目の特定の角度において下向きの力「負のマグヌス効果」が生じ,ボールが落ちることが分かりました。

世界で初めて竜巻の強さを表す分類「F(フジタ)スケール」を考案した科学者・藤田哲也の生涯を綴った一冊です。32歳で渡米し,生涯を気象の研究に奉げた藤田は,やがて世界中の空の安全につながる「ダウンバーストの発見」という偉業を成し遂げます。

独特の研究手法のため,時に多くの科学者と対立した藤田ですが,彼は航空事故防止につながる気象の研究に強い信念をもって打ち込み続けました。その原点には,北九州市出身の藤田が1945年8月20日,原子爆弾の威力の調査のために訪れた長崎で目にした光景があったのです。

『Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた男』 佐々木健一著 文春文庫 2019年11月 ISBN:978-4-16-791392-2

海水などに含まれるDNAを直接検出する環境DNA解析の手法により,培養や観察が困難な海中の微生物を幅広く探索することができるようになりました。その中で,20年以上前から短いDNAの断片だけが発見されていた謎の生物がありました。

今回,その謎の生物のうちのひとつが,これまでに知られていない光合成生物であることが突き止められました。ラピ藻(Rappephyceae)と名付けられたこの生物は,世界中の海に広く分布していることも分かりました。

2020年11月,都市化などにより観測が困難となってきた生物などについて,2021年より「生物季節観測」を行わないことが発表されました。

このことは発表と同時に大きな反響を呼びましたが,このたび,気象庁・環境省・国立環境研究所が協力し合い,観測対象外となった調査についても,専門的な知識をもった調査員が行う「調査員調査」,広く一般の市民に参加を呼び掛ける「市民参加型調査」などで発展的に活用していくことが発表されました。約70年間継続されてきた調査が,新しい形で未来へとつながります。

2021年ー3月第4週

えものを捕食して生きるハンターには,さまざまな生存戦略があり,捕食のための多様な姿形・行動があります。ハンターの進化のはじまりとして,えものを捕らえる「顎」の進化からスタートする本特別展は,現代を生きる多様なハンターの「狩り」と,そのための体の仕組みや生態を紹介しています。

動物番組で有名な千石正一氏の集めた両生類・爬虫類の標本や,ニホンカワウソのタイプ標本など,貴重な標本も数多く展示。2021年6月13日(日)まで。

※緊急事態宣言発出を受け,4月25日(日)5月11日(火)臨時休館。今後の日程はHPにてご確認ください。

生物の雌雄を決める性染色体は,通常1対2本。私たちヒトも,2本の性染色体をもっています。

しかし,台湾に生息するスインホーハナサキガエルについて新しい手法で解析したところ,このカエルはオスが3本のX染色体と3本のY染色体,メスが6本のX染色体をもっていることが分かりました。また,この6本の性染色体については,もともと3本の染色体が三つ巴式に融合した結果,性染色体が6本に増えたのだということも明らかになりました。

地球の外側,隣に位置する惑星・火星。その表面には水の流れた痕跡が残りますが,現在の火星の表面は極寒の砂漠です。

これまで,火星の水は太陽風により宇宙空間へ吹き飛ばされたとされてきましたが,最新の研究で,一部の水が火星の地殻内の鉱物に取り込まれた可能性が示唆されました。かつての火星には,地球と同じ青い海があったのかもしれません。

生物の「相同器官」の例としてよく挙げられるのは,ヒトの腕と他の生物の前肢の例でしょう。では,魚類の鱗と相同なヒトの組織は何でしょう? 魚類の鱗と鳥類の脚の鱗は同じもの?

改めて問われると,身近なのに意外と知らないあらゆる「鱗」について網羅した,初めての「鱗大図鑑」です。

 『鱗の博物誌』 田畑 純,遠藤 雅人,塩栗 大輔,安川 雄一郎,栗山 武夫,森本 元 著 2020年10月 グラフィック社 定価:4180円(10%税込) ISBN:978-4-7661-3369-1

江戸時代の絵師「伊藤若冲」。その代表作と言われる「動植綵絵」の大規模修理の際の調査で,当時日本に持ち込まれたばかりの「プルシアンブルー」が使われていることが判明しました。

プルシアンブルーは世界で初めて人工的に合成された顔料であり,当時は動物の血液などから合成されていました。この記事では,若冲の使った「青」の製造工程を再現し,起きている化学反応を解説。さらにできた顔料で実際に若冲の描いたルリハタを描く実験を紹介しています。

日経サイエンス 2017年10月号 記事ダウンロード¥611

2021年ー3月第3週

現生の肉食哺乳類は、体重4キロのオオミミギツネのような小型から体重190キロに達する大型のライオンまで、様々な大きさの種が存在する。しかし肉食恐竜は、大型と小型に二極化され、100~1000キロの中型の種が極めて少ない。

これは長らく謎とされてきたが,大型肉食恐竜は,成長途中で中型肉食恐竜と同じくらいの大きさとなる期間があり,餌を奪い合う関係となるため,中型肉食恐竜が存在できない,というシミュレーション結果が発表された。

水に溶けているナトリウムイオンと塩化物イオンが結びつき,塩化ナトリウムが結晶化していく様子を直接撮影することに,東京大学などの研究グループが成功した。
 
ナトリウムイオンと塩化物イオンは,不安定な結合や、結合が不明瞭な状態を繰り返して成長。四角い結晶核となり安定すると、イオンのペアを加えてさらに成長する。
しかし,やがて蒸発するようにイオンが離れて結晶核が姿を消し、数秒後に再び無秩序からの結晶形成を始めた。この繰り返しを9回撮影できたという。
水田などに生息する5ミリほどの昆虫の一種・マメガムシは、カエルに捕食されても消化管を生きて通過し、さらにカエルのお尻の穴(総排出腔)から生きたまま無事に脱出することを,神戸大学の杉浦真治准教授が発見した。
 
昆虫は,ほかの動物に捕食されないよう, 様々な逃避・防衛行動をとることが知られている。また,まずい味などをもち,捕食されても吐き出されることで身を守る昆虫もいる。
しかしマメガムシは「捕食されたら腸の内容物を掻き分けて,早く排出されることで身を守る」という行動をもつことが分かった。カエルの排便を腸内から促している可能性もあるという。このような行動をもつ生物は,これまで知られていない。